エドワード・ヤン、ホウ・シャオシェンと、21世紀の台湾映画とをつなぐ90年代の最重要作品、デジタル修復をへて遂に初の同時上映が実現!

「世界中で圧倒的に評価されているハイクオリティーなアート映画、でもちょっととっつきにくそう……」、当時そんな印象が一般的だった、エドワード・ヤン(楊徳昌)、ホウ・シャオシェン(侯賢孝)やツァイ・ミンリャン(蔡明倫)らのいわゆる台湾ニューシネマの系譜から、突如異端児の如く出現した新人監督チェン・ユーシュン。ツァイ・ミンリャンのテレビドラマ「快楽車行」(89)にスクリプターとして参加、『熱帯魚』(95)の制作にあたっては台湾ニューシネマの重鎮ワン・トン(王童)から手厚い支援を得るなど、そのキャリアの出だしが示すように、先達からの影響はそこかしこに感じさせつつ、同じことは繰り返したくない、と独自のポップでオフビートな作風を確立し、台湾の若い世代から広い共感を得た。

受験戦争真っただ中の少年が誘拐事件に巻き込まれ、連れ去られた南の漁村で、不意に訪れた夏休みのような不思議な時間を体験する、奇跡のデビュー作『熱帯魚』。都会に生きるごく普通の、いや全く冴えない若者たちの恋の行方を、優しいまなざしでビタースイートに描いた第2作『ラブ ゴーゴー』(97)。いずれも国内外で高い評価を得たこの2作品のみを残して、しかしその後チェン・ユーシュンは長い沈黙に入ってしまう、これでやりたいことは全てやりつくしてしまったかのごとく。もちろん、その間も作品の輝きは全く色褪せることなく、その後の台湾映画に強い影響を与え続けた。『藍色夏恋』(02)や『あの頃、君を追いかけた』(11)など青春恋愛映画の傑作群に流れるみずみずしさ、イノセンスの源泉がまさにここにある。そしていま、遂に待望のデジタルリマスター化が実現。その類まれなる色彩感覚、映画的センス、リズムそして抒情豊かな物語を制作当時のクオリティーで追体験できる機会がようやく訪れた。